今回は、横歩取り△4二玉型に対して▲3六飛とされた場合を研究しましたので紹介したいと思います。前回の研究の派生変化の紹介になりますのでまずはそちらからご覧ください。
テーマ図
今回のテーマ図はこちらになります。
ここから▲6六角打、▲2八飛、▲2一飛成が考えられる先手の応手です。
それぞれの対策を見ていきましょう!
飛車取りの掛け合い|テーマ図~▲6六角打
飛車取りに掛けられたなら飛車取りに掛け返せばいいじゃないということで▲6六角打と指された場合を見ていきます。
上図から後手は、△2六角 or △8八飛成▲同角としてから△2六角が考えられる手になります。この二つを比較して単に△2六角打と指した方が勝率が上がるという結論になりました。その理由を説明します。
△8八飛成をいれない理由
まず、△8八飛成から少し進んだ局面を見てみます。
以下△8八飛成から▲同角△2六角▲1一角成△3三桂と進みます。
自然に進むと上図の局面になりますが、1一の馬が少し気になります。さらに▲2一飛打からの攻めがあり受ける展開になってしまいます。よって、攻める展開の方が好みな私としては単に△2六角とする方を選びます。
罠を仕掛けよう!|△2六角
上記の理由から△2六角と進めます。
次に先手は飛車をとらないと駒損になるので▲8四角と指してきます。
この手に対して△6六角として罠を仕掛けます。
この手には2つの罠があるのでそれぞれ解説します。
第一の罠
第一の罠の発動条件は、8六の角と2九の桂が浮いていることです。
では、条件に合った▲5八玉と指された場合を例に見ていきます。
ここで、△2四飛が狙いの一手になります。
先手は▲2八歩と飛車成を防ぎますが△3八歩打▲同金で玉の逃げ道を塞いでから△8八角成とします。以下▲同金△8四飛と進んだ局面は銀得になっています。
第二の罠
第一の罠の条件が満たされなかった場合は第二の罠にかかってないかをみましょう。
第二の罠が発動するのは、△8八角成が成立する時です。つまり△8八角成▲同金と進んだ時に△7九飛打と指すことができる場合に発動します。
具体的な手としては2九の桂取りを受けた▲2八歩打、角が浮いているのを解消する▲7五角が考えられます。
~▲2八歩打と指された場合~
△8八角成▲同金△7九飛打と進みます。▲6九飛打と辛抱されますが△8七歩打が好手になります。▲7九飛と飛車を取られますが△8八歩成▲7七飛△8六歩打と進んだ局面は飛車を取ることができそうなので後手優勢です。
下図から▲7五歩は△8五金打で飛車の逃げ道を防ぎながら角を詰ますことができます。
~▲7五角と指された場合~
同じように△8八角成▲同金△7九飛打と進みます。▲6九飛打と辛抱されて▲2八歩打と指された場合と同じように△8七歩打としたいですが、今回の場合は7五の角があり△8六歩打とすることができないので成立しません。よってここは大人しく△7六飛成としておきます。
まだまだ難しい局面ですが、飛車の働きの違いや角取りの先手であることを加味して指しやすいと思います。
例外に対処しよう!
第一の罠の発動条件は満たしているが、単に△2四飛打と指すよりも有効な手がある時があります。
それが▲6八玉と指された場合です。
この局面では△8七歩打が好手になります。▲同銀は△9九角成があるので▲7七銀くらいですが、ここで△2四飛打とします。
先手は▲2八歩打と受けますが△7七角成▲同桂△8四飛と進めば銀得で後手指しやすいです。
罠に掛からない場合
上記の罠に掛からない手が▲6六角になります。
こちらの手に対しては、△同角▲同歩△4五角打と進めます。
△2七角成と7八の金取りを掛けた手になります。先手は金を取られる方が厳しい手になるので金取りを受ける手をしてきます。
候補手としては、▲6九玉、▲6八玉が考えられます。それぞれの変化を見ていきます。
攻め続けよう|▲6九玉
上図は▲6九玉と受けてきた局面になります。
ここで△6七飛打が相手を惑わす一手になります。
▲6八飛打と指された場合は△同飛成▲同玉で▲6八玉の変化に合流するので、▲同金と指された場合と玉を逃げた場合を見ていきます。
~▲同金と指された場合~
▲同金△同角と進んだ局面が金と桂の両取りになっています。先手は一手一手気が抜けないのに対して後手は狙いがわかりやすいので指しやすいと思います。
~玉を逃げた場合~
玉を逃げる手は、▲7九玉、▲5九玉、▲58玉があります。
▲7九玉と指された場合は、△6六飛成▲6七歩打△同龍▲同金△同角成と進んで金取りと△7八金打からの詰みを掛けることができ後手優勢です。
▲5九玉と指された場合は、△5七飛成▲5八歩打△5四龍と進んで金取りと△2七角成を見て後手指しやすいです。
▲5八玉と指された場合は、△5七飛成▲同玉△7八角成が成立します。
▲8五飛打に対しては△3八歩打が上手い手になります。
▲同金なら△8六歩打▲同飛△6七金▲5六玉△5八金で先手玉を裸にできます。
▲同銀なら△2八歩打で桂馬が取れるので攻めの幅が広がります。
馬をうまく活用しよう|▲6八玉
では、局面戻って▲6八玉と指された場合を見ていきます。
ここは△2七角成として金取りにします。
▲3八銀なら△2八飛打▲3九金△3八飛成▲同金△同馬で飛車と金銀の交換に成功します。
▲3八金なら△同馬▲同銀△3九飛打で銀取りと△8七歩打▲同銀からの△8九飛成を掛けて攻めが繋がります。
▲4八金なら△3八歩▲同金△4九飛打で先手の受けが難しいです。▲2七金とすれば△3九飛成で先手陣は崩れますし先手は他の手を指すのはなかなか難しいと思います。
ここまでで▲6六角打と指された場合の変化の解説は終わりにして次は▲2八飛と指された場合を見ていきます。
冷静な一手|テーマ図~▲2八飛
下図はテーマ図から▲2八飛と指された局面です。
余談ですが上図の局面は後手の玉と角の位置が違うものの
2021-2-11 藤井聡太 二冠 vs. 三浦弘行 九段 第14回朝日杯将棋オープン戦 決勝
において同じような局面が出てきています。
では、▲2八飛と指された上図の局面からどう指せば良いのか解説していきます。
まずは、飛車の頭を歩で叩きます。
この歩を取ると△8八角成から8筋が崩壊するので先手は飛車を逃げます。
大体は5筋に飛車を逃げる
逃げるところはいろいろありますが、大体の方は5筋に逃げてきます。
先手の思考としては、▲6八飛の場合は△8八角成▲同金△7九銀打の変化がちらついて少し嫌だし3筋4筋に逃げたら駒組の邪魔になりそうといった感じだと思います。
よって▲5八飛の変化を見ていくことにします。
と言ってもここからは個々人の構想力が問われるので、あり得そうな局面に対する攻め筋を紹介したいと思います。
少し進んで下図の局面の場合を見ていきます。
後手の駒組の基本的な方針としては、5筋を守るようにすることです。
攻め筋としては、上図から△5四歩▲同歩△7五歩▲同歩△6五桂▲6六銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩打△6六飛があります。
以下▲6七歩△7六飛と進めば△7七歩打が受けにくく後手優勢です。
攻め合いの一手|テーマ図~▲2一飛成
この手は△8八角成からの対応ができると思っている方が指してきます。
良く出てくる筋ですが、知っておくと形勢判断に役立つかもしれないので是非覚えてください。
良く出てくる受けの手筋
上図から先手は▲同金としてしまうと△同飛成で終わってしまいます。
よってここで▲7五角打または▲9五角打とされます。
どちらでも飛車が取られる変化に合流するので▲7五角打の流れを見ていきます。
以下△7八馬▲8四角に対して△6七馬と進めます。
△6七馬としないと▲3四桂からの攻めが厳しく潰れてしまいます。
よって△6七馬と進めるわけですが、これに対して先手は▲2四桂打、▲4八玉を考える方もいると思います。どちらの手も後手が有利になるので見ていきます。
よくある攻め筋だが…|▲2四桂打
▲2四桂打という手は、よくある手で有効なことが多いですが上図の局面では悪手になります。
以下△2二金▲1一龍△2一金打で龍を確保できます。
△2二金に対して▲同龍も怖そうに見えますが、△同銀▲3二飛打△5一玉とした局面は後手優勢です。
▲8八飛成なら△6九飛打からの三手詰めで、▲5八金なら△2三馬と引いておけば飛車を確保できます。
玉を逃げても…|▲4八玉
では、次に▲4八玉と指された場合を見ていきます。
玉を逃げる自然な手に見えますが、△2二金▲1一龍△2一金打で龍を確保できます。
このように▲2四桂打や▲4八玉では後手が優勢なので、先手は他の手を指してくることになります。
壁銀を作らせる自然な手|▲8二歩打
他に指してきそうな手としては▲8二歩打が考えられます。
この手に対しては△6九銀打と指します。
以下▲4八玉とされますが△5八金打▲同金△同銀成▲3八玉△2二金▲1一龍△2六歩打までで△2七金打からの詰めろを掛けることができます。
先手はなかなか逃げることができません。後手は詰めろに加えて△2一金打から龍を取ることができるので指しやすいと思います。
では、最後に△6七馬に対して最善手を指された場合を見ていきます。
厄介な反撃|▲6八歩打
ソフト的には、この▲6八歩打が最善手となっています。この手の意味としては、飛車を渡しても詰めろではないようにすることにあると思います。
▲6八歩打に対して△8九馬としますが▲2四桂がとんできます。
先ほどは、飛車を手に入れれば詰んでいたので▲2四桂は成立しませんでしたが、詰めろを掛けられなくなっているので成立してしまいます。
よって先ほどと同じ受けはできないので△2三馬とします。
以下▲3二桂成△同馬となりますがこの局面をどう見るかです。
先手は、片方の陣形は崩壊していますが龍を作れています。
後手は、馬が作れており陣形も低い構えで打ち込みの隙は無さそうですが攻めの糸口が難しそうです。
後手の方針としては、△4四歩や△3三馬で馬を活用する方向でいくのが良さそうです。
最後に
今回は、横歩取り△4二玉戦法において出てくる局面から様々な変化を見ていきました。時間の短い対局では受けるのは大変ではないでしょうか?ぜひ後手番の横歩取りになったら△4二玉戦法を指して見てください。